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猫と相撲と文房具(ときどき野球)。猫町フミヲの妄想の日々。


by nekomachi_fumiwo
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新聞とバイバイン、小熊英二、そして六花亭のバターサンド。

結局昨日家を出たのは夕方だった。
ひたすら新聞の整理をしていたのである。

年明けからためこんだ新聞の山をなんとかする、というのがこのショート・バカンスのもっとも大きな目標の一つといっても過言ではないのだが、それは実に気の遠くなるような作業であった。
本当は中も見ずにさっさと紐で縛ってしまいたいところなのだが、ひょっとして見なかった新聞の中に何かとんでもなくすばらしい記事があるのではないかと思うと捨てられず、そんな自分にイライラしながら結局すべてのページを黙々とめくることになるからである。

文化欄を中心に見るぞ他の記事は飛ばし読みするぞどんどんめくるぞ、といくら心に強く誓っても、気づいたら何ヶ月も前の社会面を、政治面を、スポーツ欄を、週刊誌の見出しを、本の広告を、投書欄を、社説を、天声人語を熟読している私がいる。
そして、普段は考えずにすませている政治的なあれこれや経済的なあれこれ、教育問題や医療問題、文芸批評や映画評論で頭がぱんぱんになってしまうのだ。

もちろんこれは少しも悪いことではない。
むしろ歓迎すべきことである。
問題は何ヶ月もためこんだ新聞を一気に読むという労力のはかりしれなさにある。
どうして1日1新聞(夕刊を入れても2新聞)が処理できないのか。

ドラえもんの道具の中に「バイバイン」という道具があるのをご存知だろうか。
目薬のような形状をした「バイバイン」をあるものに一滴垂らすと、5分ごとに倍々になっていくのである。
つまり、一滴垂らすと1個だったものは5分後には2個に、10分後には4個に、15分後には8個にと倍々に増えていく。
ためこんだ新聞を整理するときはいつも、この「バイバイン」のことを思い出す。
それは恐ろしく確実なペースで増殖していくからである。

それにしても、新聞というのはすごい。
テレビあり、ネットあり、という情報過多の中で、なおその存在を強く主張するためには当然必要なのであろうが、紙面の組み方に並々ならぬ工夫と知性を感じる。
到底すべての紙面を読みきることのできない読者のために、最低限のことは見出しが教えてくれる。
また、難しい内容の記事はきちんとインタビュー形式で門外漢にも分かりやすく教えてくれる。

例えばナショナリズムについて小熊英二にインタビューしている記事があった。
小熊英二は私が書店員をしていた頃にブレイクした学者で、『“民主”と“愛国”』(新曜社)は6000円以上もするにもかかわらず何十冊も売れた。
絵の上手い子に小熊英二の似顔絵のポップを作らせたことなども懐かしい(それにしても小熊英二はいつ見てもタートルネックを着ている)。

さて、その新聞記事がとてもよかった。
それは実に分かりやすく、歴史における被害と加害の意識の変遷を説明したインタビュー記事だった。
賢明な学者というのは、あらゆる物事がそう単純には説明できないことを知っている。
そして、物事を正しく認識しようとすればするほど、あらゆる角度からの分析が必要で、それは議論を呼び、いっこうに答えがでないことではあるけれど、それに焦れず、善悪二元論のような省エネで物事を割り切ることの誘惑に耐えることが知性なのだということを思い出させてくれる。
それは実に示唆的であった。

そんなこんなで昨日は指を真っ黒にしながら、私は古い新聞からいろいろなことを吸収した。
そして、新聞の整理を中断し、新聞記事で知ったあれこれの本を求めて、雨の中図書館へと出かけたのが夕方だったのである。
当然となりのおばちゃんへの「健康若人的アピール」はできず。
でも今日こそは。

あれ?誰か来た。

「ごめんねえ」

隣のおばちゃんキターーー!
今日は六花亭のバターサンドをいただいてしまいました。
by nekomachi_fumiwo | 2007-04-05 16:48 | 日記